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前置き。
娘は地味でクールなリケジョである。
私とは似ても似つかない。
趣味もまったく違う。
接し方も距離がある。いつも無愛想でぶっきらぼう。
私のことを、機嫌が良いときは名前にさん付け、悪いときや批判的なときは呼び捨てにする。または親しみを込めてエロババアと呼ぶ。

幼少期から自分をしっかり持っていて、ひとつも親の思い通りになどならなかった。淋しくも頼もしい。
くそ真面目過ぎて私のアバウトさが許せないと言う。

さて、彼女は15歳頃に先天的な疾患が見つかり、成人するまでかなり体調が悪く、不本意ながらたくさん親のサポートを必要とした。長くなるし、正直　思い起こすと泣けるので割愛する。

その彼女が最近、私の離婚に乗り気で急がせさえする。もう、私も就職したし、大きく体調を崩すこともないだろうからいいんじゃない？と。

無関心を装いながらずっとずっと見ていたのだ。
｢無力どころか病気で何の役にも立たないから口出ししなかった｣そうだ。

将来あなたに迷惑かけない状況が整ってからね。心強い言葉をありがとう。

｢うん。応援してる。ただし、ひとつ約束して｣

ん？

｢絶対、再婚はしないで｣

はああ なに、それ？
まあ、積極的に再婚する気は全然ないけど
約束はできない。人生何があるかわからないもの。
あなたも立派なおとなだし、それは私の問題でしょ。
どうして？

娘はふて腐れて部屋にこもってしまった。
子どもみたいにとがらせた口がかわいかったけど
さっぱりわからない、娘ごころ。

テキトーにはいはい、と言っておけば良かっかもしれないけど私も半ば意地だ。
そんなことを約束させられる筋合いはない。
かくして、こじらせ母娘の夜は更ける。