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私の職場の上司は昼食を取らない。多忙であることとダイエットの目的が合致しているからと上司本人は述べている。
私は大体の場合昼食を取る。職場から比較的近いところにカツ丼大手チェーンの店舗があり、迷ったらカツ丼ということも多い。上司の話を聞きながらカツ丼を食べている時には自分が刑事ドラマの犯人役になって取り調べや説諭を受けているような気がしてくる。

職場では先輩2人と昼食を共にすることもある。
女性の先輩（仮にAさんとする）は槇原敬之氏のファンで、氏についての話を聞き終わらないうちはこちらがAさんに何を言っても聞いてもらえない。そして聞き終わってもあまり聞いてもらえない。槇原敬之氏の話に限らずAさんが話したいと思っていることを全て話し終わらない間はAさんに何を言っても空矢となるので、私は最近槇原敬之氏やAさんの私生活に関する知識を増やしつつある。
男性の先輩（仮にBさんとする）はよく本物の説諭をする。内容は殆どいつも同じである。Bさんが同じ話を数十分間繰り返し私がそれに相槌を打つという退廃的な応酬が始まっておよそ9か月経つ。

何にせよ気まずくも気楽なランチタイムである。かつて会社勤めをしていた頃には誰と食事に行くかということで派閥めいたものが出来たりしていたのを考えるに、今の環境は何と先進的なのかと思う。

先日Bさんが近いうちに慰労会を開こうと言い出したので、私は「気まずい会になりそうですね」と自分の予測を述べた。
Bさんは「いやいや大丈夫、きっと楽しくなるよ」と言って笑った。
私はBさんから嫌われているのかもしれないが、おそらく相手にされていないだけだと思う。気楽なのは私だけではないようで一安心である。