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私事で恐縮であるが（私の書くことは全て私事であるが）現在結婚を考えている。私は過去に結婚した経験が無く今後もそれは無いものと思っていた。また自分の両親の関係から感じた諸々のことから私はおそらく感情の深い部分で結婚に対して漠然と悪い印象を持っていると思う。それでも私も結婚をしたいと思うのであるから世に結婚する人の多いことは自然なことと感じる。

結婚に際しいくつかの障壁は存在し、私は現在それらのうち更にいくつかへの対応を考えたり実際に行動を起こしたりしている。目下その成果は出ていない。そのことを懸念する一方で障壁の全てはあまり問題でないとも思っている。現代日本において結婚の権利は単に両者の生物学的性別が異なるだけでかなり強く保障されるため、たとえ酷い状態でも結婚しようと思えばできるからだ。結婚することよりも結婚生活の維持発展がはるかに困難であることを耳にしているとはいえ、生活を維持発展させるのが困難であることは結婚していようといまいと同じであるとも思う。
私のこのような考えは甘いと言う人もあろうが、私の考えが常に甘いことは相手も理解している。相手の理解が浅薄であるうちに早く結婚してしまおうかという悪辣な思案も私の中には湧いてきており、頭が禿げる前に結婚しようという人の気持ちはこのようなものだろうかと想像する。

なぜ結婚を考えるに至ったのか自分でもよく理解していない。結婚したらああしようこうしようという想像も特段のものは無く、おそらく住居と生計を一にする一つの世帯を形成するのであろうというくらいである。私は今や世帯にどの程度の意味があるのか知らないし戸籍や姓についても殆ど無知である。結婚に関する事項の中でも特に姓に関しては今だに顕著に女性に不利に過ぎると思うので、結婚が成立したら当事者のほうで勝手に好きな姓を新しく作って届け出るか、専用のコンピュータープログラムを組んで無作為に決めるかしたほうがましなのではないかと考えているくらい私の意識は低い。
家の存続、血の存続、伝統の継承、社会秩序の維持。前半3つは私の知ったことではない。社会秩序の維持には関心があるが前半3つと無関係のところで成立させるべきものであり、秩序だけあって尊厳も自由も個の概念も無いならそんな社会はまるごと無いほうがましだと思う。他の理不尽を山ほど我慢しているのだから結婚くらい勝手にさせておけばいいし勝手にさせてくれ。ついでに離婚も。家が無いと誰も生きてゆかれないなら社会の全員が匿名で全員に用意しよう。法や制度や税ってそういうものじゃなかったっけ。

前述の障壁を含めた数多の事情を考慮の上に私の相手と私が実際に結婚に至るか否かは不透明ながら、私は私でせいぜい可能な範囲の準備を整える所存である。物事を成功させたことは無いが今回ばかりは成功させたいと思うので、近頃はいつになく真剣に物事を考えている。真剣になるのもたまには良いものである。