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雨が好きである。今日は私の住んでいるあたりで雨が降ったり止んだりしていて、長い時間ベランダに出て移ろう空模様をぼんやりと眺めながら過ごした。

私が高校の3年間を過ごした県は雨の多い土地であった。雨の日はよく雨音が完全に消えてしまわないくらいの音量でラジオを聴いた。落語やラジオ小説が面白くて、本も読みたい、映画も観たい、音楽も聴きたい、と以前から欲望が多いのにラジオも聴きたいという更なる欲望にまで突き動かされ、このままでは自分の欲望で死ぬのではないかと思ったのを憶えている。
ラジオは今も面白いが、映像を伴った番組も多くなり、何かのプロではない人がスマートフォンのアプリケーションの機能を使って配信することも普及している。昔のラジオ文化のイメージは後退しているように感じる。

先程もう夜に近い夕方にまた一度雨は上がった。コンビニへ行くのに公園の前を通り過ぎると、木々や雑草は濡れて街灯の明かりに照らされ、鉄棒やブランコも洗われてぴかぴかとしていた。偶然に近くの民家の窓からラジオのものらしき音が漏れ聞こえたのも嬉しく感じられた。

今日私は普段より内向的な気分で過ごしたようだ。昨今の制限を窮屈に感じているが、今日に限っては私の方がたまたま順応したのかもしれない。今日の私がそうであったように一人で静かにしていたい人も必ずいる。私も今日を平穏に過ごさせてもらったのだから、他人の平穏を妨げることのないように気をつけよう。