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この日記を書き始めておよそ10日になる。その間3件のコメントを頂いた。それぞれ別の方からであるが、いずれも助言や肯定的な感想という善意のものであることに私はとても驚いている。てっきり支離滅裂なものを書くなとかいい歳をしてパートで働いているなとかいうコメントしか来ないと思っていた。そういうものは今後来るかもしれないが、たとえ一部の方からであっても良い反応を頂けたということに変わりは無い。生きていれば有り難いこともあるものである。

まずはコメントを下さった3名の方々に篤く御礼を申し上げます。お陰様で私はデヴィッド・ボウイを聴きなおし、並んで眠る小犬と小猫の印刷されたメッセージカードを買い、今月の終わりの方に御岳山に登る予定を組むに至りました。
そして特にコメントをされずとも拙文にお目通し下さった方々にも御礼申し上げます。貴重なお時間を費して頂けたというのはとても嬉しいことです。

ここからは通常の日記になります。少し変な内容です。

昨日は昼頃から知人と会って長時間世間話をしていた。この知人は品行方正を絵に描いたような人で、そういう人でありながら私と世間話をするという点も含めて謎の多い存在である。趣味があるということだがそれが何であるかは「恥ずかしいから」と教えてくれない。私に休日の過ごし方を聞く一方、自分のそれは教えてくれない。犬と暮らしているらしいが犬種を教えてくれない。私は単にこの人から嫌われているのかもしれない。しかし会って話をすることを提案したのはこの人である。
謎はこればかりではない。
『ピタゴラスイッチ』という有名な知育番組がある。この人はこの番組を好きで欠かさず視聴しており、その内容について教えてくれるのだが、いつも番組名を「ピタゴラスイッチ」ではなく「ピタゴラスウィッチ」と発音する。私は日本語しか話せないのに日本語が流暢ではないということもあり、この人のその点を非難するものでは決してない。しかしこの人は発音が明晰な部類に属するのである。この人はまた、「ベビーカー」を「ベイビーカー」と言うし、「CD」は「シーディー」ではなく「スィーディー」である。英語の発音に近づけているのかとも思ったが、近づけるならもっと近づけるだろう。そしてそもそもベビーカーは和製英語だったように私は記憶している。とにかく万事においてその人の意図が見えず、私は少しの違和感を持ちながらその人の話を聞くのが常である。

共通の知人たちの間ではこの人のことを秘密主義的でエキセントリックであると評する向きが多く、この人と比較的近しい私を「変人と交流できる変人」と見做す傾向が見られる。私はその人のことを変人だとは思わない。いつも頭髪をタイトに纏め、首に鮮やかなスカーフをあしらい、紅茶のカップをソーサーに置くのに音も立てず、街路樹の色の移り変わりやよく出会う犬の足取りに見える機嫌の良し悪しを鋭敏に捉えるその人のことを至極真っ当な方だと思っている。だいいち私達を変人と評して最も面白がっている男は数年前に私と徳島へ旅行した時にパスポートと200万円近い現金を持ってきたり、その暫く後には自動車の運転中にくしゃみをしただけでハンドル操作を誤って電柱に衝突してむち打ちを患ったりしているので、彼から変人の誹りを受ける筋合いはおよそこの世の誰にも無いのではないかと思う。

彼のことはさておき、私はこの知人から教えてもらえない事のあるのを好ましく感じている。私生活の中で何を話し何を話さないかを決めるのは本人であって、誰かが知りたがっているというだけで何もかも開示しなければならないという法は無い。私はあけすけな方なので、この人の態度には学ぶべきものがあるはずだ。