Lufre さんの日記
2025
12月
13
(土)
21:11
本文
冬は、
世界のすべてを沈黙へと連れてゆく季節だ。
風の勢いも落ち、
樹々の影も縮み、
言葉で賑わっていた人々の息遣いさえ、
ひんやりと凍りつく。
そして、そんな冬の入口で
私はひとつのことに気づく。
“沈黙だけが、騒ぐ者の正体を露わにする” と。
書斎の窓を薄く開けると、
夜気は透明で、
遠くのどこかで誰かが
まだ何かを叫んでいるような気配がある。
しかし、その声は
冬の空気に触れた途端、
凍った砂のように
ぱらぱらと砕けて消えていく。
声は大きくても、
中身は軽い者がいる。
怒りの言葉を放っても、
ただの白い息となって
すぐに空へほどけてしまう者がいる。
冬は、それを容赦なく教える。
“温度のない言葉は、生きられない” と。
対して本当に重い言葉は、
声を張り上げなくとも
雪の下の小石のように
じんわりと、静かに
地面の底で息をしている。
私は知っている。
冬は、強者の季節だ。
騒がず、
争わず、
ただ真っすぐに立つ者だけが
白い世界で影を落とすことができる。
雪は嘘をつかない。
踏みしめた者の足跡だけが残る。
踏みしめなかった者は、
どれほど遠くから声を張り上げても
そこには何ひとつ刻まれない。
だから私は今日も
書斎の灯をひとつだけ点し、
紙の上にそっと筆を置く。
静かに、ただ静かに。
この冬の沈黙が、
誰に向けたものかを
わざわざ書く必要はない。
読む者が知っていれば、それで良い。
雪の深さと同じく、
真実の深さは
声ではなく 静けさ が決めるのだと──
冬はいつも私に教えてくれる。
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