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風が澄んで、山の稜線が一段とくっきりと見えるようになった。
田の稲穂は黄金に染まり、神社の境内では鈴虫の声が響いている。
この時期になると、ふと足を止めて深呼吸をしたくなる。
空気の中に、「清め」のような静けさが宿るのだ。





日々、世の流れは速く、人の心はそれに振り回されているように思う。
便利さと効率ばかりが求められ、
まっすぐであろうとする気持ちさえ、どこか照れくさく扱われてしまう。

けれど——
古い寺の石段を登るとき、
誰もが無意識に背筋を伸ばすように、
人には「正しくあろう」とする本能のようなものがある。
それはきっと、古から受け継がれた魂の律（おきて）だろう。

風に葉が舞うように、時代は移ろってゆく。
だが、どれほど形が変わろうとも、
自分の中の芯だけは曲げずにいたい。

それが、私にとっての「まっすぐな心」。
秋風のように静かで、けれど確かなもの。

今日もまた、筆を執る。