Lufre さんの日記
2026
2月
17
(火)
22:58
本文
夜の帳が降りる頃、それは静かに語り始める。
その声は、国という輪郭を曖昧にするような響きを帯びていた。
彼は、かつて愛した国の名を軽やかに呟く。
しかし、その言葉にはしばしば、苦笑と違和感が混じる。
あの国の街を歩いた記憶、列車の窓から見た田舎風景、夕焼けに染まる瓦屋根──
それらを語るたび、声がひそかに震える。
「日本という国は…」
その言葉の前に、一瞬躊躇がある。
彼は言葉を選び、観念を操りながら、距離をとろうとしている。
だが、その距離は、心の中の亀裂に他ならない。
国という影が、近づくたびに崩れ、遠ざかるたびに引き裂かれる。
もしも国という名の檻がなければ、
彼の声はもっと澄んでいたかもしれない。
だが彼は、檻の中で吠えるしかなかった。
そして、影が語る。「私はこの国を知らない」と。
その無知と憤りの中で、彼は孤独という名の国を彷徨う。
静けさが戻った時、残るのは国という輪郭のない声と、
かつてそこに在った愛憎の余白だけである──。
言葉は届かなくていい。
ただ、どこかで誰かのまぶたの裏に、
一瞬でも「引っかかる」ことがあれば、それでいい。
閲覧(7)
| コメントを書く |
|---|
|
コメントを書くにはログインが必要です。 |















前の日記

