Lufre さんの日記
2025
10月
26
(日)
15:13
本文
書斎より…穏やかに老いて、ただ静かに見ている
朝は、紅茶の香りで始まる。
少し遅めの起床は、現役を離れてからの唯一の贅沢だ。
手帳には、何の予定も記されていない。
けれど、私には退屈という言葉が似合わない。
むしろ、ようやく「時間という贅沢」を味わえるようになった。
若い頃は、世界を飛び回っていた。
「言葉一つが国の行方を左右する」などと笑われたが、
実際、ひとつの沈黙が戦火を避けたこともある。
今はもう、そんな緊張感とは無縁だ。
けれど、街角で誰かの不用意な言葉を耳にするたび、
つい思ってしまう。
──その一言が、どれほどの影響を持つか、あなたは想像できているのか、と。
老いて、私は誰の目にも留まらなくなった。
だが、目に映るものはむしろ増えた。
人の仕草、言葉の裏、空気の温度。
若さという仮面が剥がれた今、
本当に“見える”ことが増えている。
この優雅な老後を、私は他人に誇る気はない。
ただ、ここから静かに見ている。
誰かが積み上げるものも、壊すものも、
何も言わず、何も動かず──ただ見ている。
そして時折、少しだけ記してみるのだ。
かつて言葉で国を動かした者が、
今は、言葉で誰か一人の心を揺らせるかどうか、試してみるために。
言葉は届かなくていい。
ただ、どこかで誰かのまぶたの裏に、
一瞬でも「引っかかる」ことがあれば、それでいい。
閲覧(49)
| コメントを書く |
|---|
|
コメントを書くにはログインが必要です。 |















前の日記
