Lufre さんの日記
2025
12月
21
(日)
22:33
本文
琥珀の記憶と、静かな対話
書斎に差し込む秋の光が、グラスの中に小さな虹をつくる。
ほんの少しだけ注いだ琥珀色の液体が、
今日も静かな午後を、ささやかに豊かにしてくれる。
この香りを前にすると、あの国の記憶が蘇る──
外交官として訪れていた頃、ある晩餐で出されたのが
ラガヴーリン16年だった。
そのスモーキーさは、初めて口にする者を戸惑わせるが、
やがて慣れてくると、樽香の中に土と風と時間が宿るのがわかる。
別の夜には、ブルゴーニュのピノ・ノワール。
現地の外交官が「これは会話のためのワインだ」と言っていた。
香りは複雑で、決して派手ではないが、
時間をかけて語るほどに、味わいが深くなる。
そう、酒とは自己主張ではなく、静かなる対話のためにあるのだ。
酒の席で怒号を飛ばす者、
酔って己を誇る者──
私の知る本物の外交官は、誰一人、酒で騒がなかった。
今夜も私はひとり、
この書斎で、
音もなく、
グラスを傾ける。
言葉は届かなくていい。
ただ、どこかで誰かのまぶたの裏に、
一瞬でも「引っかかる」ことがあれば、それでいい。
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