Lufre さんの日記
2025
12月
7
(日)
22:01
本文
夜の帳が降りるころ、
彼は書斎の灯を落とし、ひとり空を見上げた。
月は雲に隠れていた。
見えぬものを見ようとするように、
彼は、しばし沈黙し──
ふと、カップに手を伸ばす。
「また会ったな、古い友よ」
そう呟く声に、応える者はいない。
画面の中で流れるのは、
どこかの誰かが奏でるチェロの旋律。
もう彼の手の届かぬ、
“誰かのロマン”に過ぎない。
自らを物語の中に置き、
一瞬だけ“詩人”になることを許された老獣は、
それでもまだ、
どこかの森で咆哮を忘れられずにいる。
※これはショートストーリーです──
その注釈こそが、
現実と夢の区別を失った者の、
最後の防壁だった。
言葉は届かなくていい。
ただ、どこかで誰かのまぶたの裏に、
一瞬でも「引っかかる」ことがあれば、それでいい。
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