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8月の夕暮れは、どこか名残惜しげに陽を落とし、空には淡い茜色が広がっています。庭の木々は夏の熱を抱きながらも、夜風にそっと秋の涼しさを混ぜ始めました。耳を澄ませば、賑やかだった蝉の声が次第に静まり、かわりに草むらから小さな虫の音が響きはじめています。その調べは、夏の幕を閉じる合図のようであり、また秋の舞台を告げる前奏のようでもあります。

窓辺で一杯のハーブティーを手に、この移ろいを感じながら本を開けば、風がそっとページを揺らしていきます。ミントの爽やかな香りの奥に、どこか深みを増した夜の匂いが重なり、心は夏と秋のあわいを旅するようです。

庭を見れば、深緑の葉は夏の力強さを残しながらも、その影にかすかな黄金色を宿し始めています。小さなリスが枝から枝へと跳ね渡り、まるで「季節はまだ続いているよ」と告げているかのように軽やかです。

夏の終わりと秋の始まり——その境目はほんの一瞬の通り道。けれどその短い時間があるからこそ、私たちは季節の変化を一層美しく感じられるのかもしれません。明日を迎えれば、暦の上でも秋。季節の扉が静かに開こうとしています。