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android さんの日記
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android さんの日記

 
2025
7月 12
(土)
01:11
夏の思い出
本文
69歳、夏子が、ふるさとの川辺で“再会

初恋、ふたたび

夏の水音
川沿いの小道を歩いていたとき、夏子はふと足を止めた。石畳のゆるやかな坂の先に、ひとりの男が立っていた。麦わら帽子、白いシャツ、リュックを肩に、あの頃と同じ癖で、右足に少し重心をかけている。

まさか、と思うより先に、声が出た。

「……信哉(しんや)くん?」

彼は帽子を取って、目を細めた。そして、笑った。昔と変わらぬ、あの、少し困ったような笑い方で。

「夏子か。……ぜんぜん変わってないな」
「そんなこと言うの、あなただけよ」

ふたりはそのまま、何も言わず、川沿いへ歩いた。風が流れ、木々がさざめき、水が遠くで跳ねた。

「この前、東京であなたの講演、動画で見たよ。すごい人になったんだなって」「そんなものよ。名刺を片付けて、やっと息ができるようになった。あなたは?」「こっちはずっと地元。町の教育委員会で子どもたちの世話ばっかり。でもね、最近、教師をやってた頃より自由でね」

沈黙が訪れた。けれど、気まずさではなかった。
川の音が埋めてくれるような、安らぎに満ちた沈黙だった。

「覚えてる?」と信哉が言った。
「小六の夏、ほら、駄菓子屋の裏で、君が“東京に行く”って言ったとき」

夏子は微笑んだ。
「ええ。泣きそうだったけど、あなたの前じゃ泣けなかった。悔しくて、手をぎゅっと握って」

「……あれ、俺にとっては、はじめて“好き”って思った瞬間だった」

風が止んだ、その言葉だけが、時間の上にふわりと落ちた。夏子は答えなかった。ただ、そっと目を閉じた。あの日の陽射し、駄菓子屋のにおい、握った手の温度が、胸の奥でふいに脈を打つ。

「ねえ、信哉くん」
「ん?」

「もし――あのとき泣いてたら、あなた、抱きしめてた?」

「……たぶん、してたな」

ふたりは笑った。
もう誰も急がなくていい年齢になった。
恋という言葉さえ、無理に使わなくていい年齢になった。けれど、そこにあるものの確かさだけは、昔よりもよく見えていた。

川がまた、光を集めて流るる
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