スピカ さんの日記
2022
10月
12
(水)
22:59
本文
大福の美人で気立ての良かった嫁さんは
結婚の翌年に病を得て他界したので、
その後は彼女の両親とも徐々に疎遠に
なっていき、いつしか縁も切れた。
そして、けっして短くはない歳月が
流れたある日
彼は義父(元義父というべきか)が病床に
あることを伝え聞き、行くべきかどうか
逡巡した末に見舞って今生の別れを
したのだった。
大福はそのことを「日記」に書き、
某SNSに投稿したのだが、その日記に好意的な
コメントを寄せてくれた女性とそのことが
きっかけでメールのやり取りをするように
なった。
彼は元々書くことが好きだったし、彼女もまた
とても良い文章が書ける人であった。
二人は長文のメールを頻繁に交わし、いろいろな
ことを話すようになった。
つまらない冗談で笑い合い、多くのことに共感し、
ときには意見を戦わせたりもした。
そして二人はいつしか、相手に対して
恋愛感情としか名付けようのない気持ちを
抱くようになる。けれど彼女には家庭が
あったので、そのように親密さが深まれば
深まるほど、二人の苦悩も増していった。
彼ら二人にひとつ誤算があったとしたら、
それは人間の感情というものを見くびっていた
ことだろうと思う。
二人は時間をかけて何度も話し合い、関係解消を
選択した。そして最後に一度だけ会おうという
ことになった。
最初で最後の逢瀬だった。
互いが相手の負担を考えたため、
どこで会うかということで揉めに揉めたので
あるが、あなたの生まれ育ったところを
見てみたいという彼女の強い希望を
大福は渋々聞き入れ、けっきょく自分の
地元で飲み会をすることになった。
こちらでは滅多にない大雪警報が発令された日、
彼女は大福の住む街にやってきた。
遠い遠い昔、
ぼたん雪の降りしきる夜更けの街を
自転車を押して歩いた。
君は僕の空いてる方の腕に自分の
腕を絡めてきましたね。
君が宿泊していたホテルはすぐそこ
だったので、ほんの短い幻夢のような
時間でした。
あのとき僕は手袋の片方をどこかで
失くしてしまったんだよ。
手袋と それから
結婚の翌年に病を得て他界したので、
その後は彼女の両親とも徐々に疎遠に
なっていき、いつしか縁も切れた。
そして、けっして短くはない歳月が
流れたある日
彼は義父(元義父というべきか)が病床に
あることを伝え聞き、行くべきかどうか
逡巡した末に見舞って今生の別れを
したのだった。
大福はそのことを「日記」に書き、
某SNSに投稿したのだが、その日記に好意的な
コメントを寄せてくれた女性とそのことが
きっかけでメールのやり取りをするように
なった。
彼は元々書くことが好きだったし、彼女もまた
とても良い文章が書ける人であった。
二人は長文のメールを頻繁に交わし、いろいろな
ことを話すようになった。
つまらない冗談で笑い合い、多くのことに共感し、
ときには意見を戦わせたりもした。
そして二人はいつしか、相手に対して
恋愛感情としか名付けようのない気持ちを
抱くようになる。けれど彼女には家庭が
あったので、そのように親密さが深まれば
深まるほど、二人の苦悩も増していった。
彼ら二人にひとつ誤算があったとしたら、
それは人間の感情というものを見くびっていた
ことだろうと思う。
二人は時間をかけて何度も話し合い、関係解消を
選択した。そして最後に一度だけ会おうという
ことになった。
最初で最後の逢瀬だった。
互いが相手の負担を考えたため、
どこで会うかということで揉めに揉めたので
あるが、あなたの生まれ育ったところを
見てみたいという彼女の強い希望を
大福は渋々聞き入れ、けっきょく自分の
地元で飲み会をすることになった。
こちらでは滅多にない大雪警報が発令された日、
彼女は大福の住む街にやってきた。
遠い遠い昔、
ぼたん雪の降りしきる夜更けの街を
自転車を押して歩いた。
君は僕の空いてる方の腕に自分の
腕を絡めてきましたね。
君が宿泊していたホテルはすぐそこ
だったので、ほんの短い幻夢のような
時間でした。
あのとき僕は手袋の片方をどこかで
失くしてしまったんだよ。
手袋と それから
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