tinc さんの日記
2021
10月
2
(土)
10:16
本文
私はこの5年くらい働いたり働かなかったりしている。何故そんなことをするかということには生活があまり忙しいと楽しくないという私の事情と髪を切れとか態度が悪いとかの苦情を私に対して述べる雇用主側の都合との両方がある。いずれにせよまともに働いていないということは誉められたものではないので私は肩身を狭くして日頃を生きている。
仕事にも楽しいものはあるが、多くの場合は仕事を探す過程のほうが楽しい。寛容さのありそうな企業だと思っていたところの採用担当者がものすごく理不尽なことを言っていたり、ろくでもなさそうな会社の人がまともそうだったりする。実際にはこの世の誰も私のために存在しているわけではないので、まともも理不尽も私の見る虚像の中のものであろう。いずれにせよ色々な人に会って話をするのは楽しいものである。
そうして会って話をした人の1人と今でも連絡を取り合っている。彼は私があまり関心を持たないまま惰性で応募した仕事の採用担当だった人である。彼を仮にIさんと呼ぶ。
あまり関心を持てない仕事だったのだから最初から応募しなければよかったのだが、暇を持て余していた私はどうせ採用に至らないだろうし万が一受かったら辞退しようという悪い考えを持って面接に向かった。印象を悪くしようと髪を結ばずに下ろし、手持ちのジーンズとブーツの中で一番ボロいのを身に着けて面接室に入った私を迎えたのが、膝のところが裂けたレザーパンツと爪先の革が破れてスティールキャップの見えているエンジニアブーツ姿のIさんであった。Iさんは私と同じく肩に乗るくらいの長髪で脂っぽそうな髭までたくわえていた。
Iさんと私は1時間ほどブーツやロックミュージックや煙草の話をして盛り上がり、労働条件や業務内容については一言も交わさなかった。面接の最後にIさんは「あ、うち来る?」と言い、私は「やめときます」と答え、2人で笑いあって連絡先を交換して別れた。私が勝手に採用担当者に親近感を持ったからといって仕事が続くとは限らない。
Iさんとはそれ以来会っていないがたまにショートメッセージで音楽や映画等様々の話をする。最近ではブーツメーカーの買収と統合を2人で嘆いた。私が何かを嘆きながら笑えるのはIさんと一緒の時だけかもしれない。Iさんと私がとても親しいかというとそうでもないと思うものの、汚くて評判の悪い格好をしている人間が自分だけでないと思うと孤独は少し和らぐ。
私は親しい人と同じく親しくない人にも救われ支えられている。そして見知らぬ人にも。そういうことを思うと私もやはり少しは頑張って働いて、税金や年金や健康保険料を納付して誰かを支えようかという気にもなってくるのである。
仕事にも楽しいものはあるが、多くの場合は仕事を探す過程のほうが楽しい。寛容さのありそうな企業だと思っていたところの採用担当者がものすごく理不尽なことを言っていたり、ろくでもなさそうな会社の人がまともそうだったりする。実際にはこの世の誰も私のために存在しているわけではないので、まともも理不尽も私の見る虚像の中のものであろう。いずれにせよ色々な人に会って話をするのは楽しいものである。
そうして会って話をした人の1人と今でも連絡を取り合っている。彼は私があまり関心を持たないまま惰性で応募した仕事の採用担当だった人である。彼を仮にIさんと呼ぶ。
あまり関心を持てない仕事だったのだから最初から応募しなければよかったのだが、暇を持て余していた私はどうせ採用に至らないだろうし万が一受かったら辞退しようという悪い考えを持って面接に向かった。印象を悪くしようと髪を結ばずに下ろし、手持ちのジーンズとブーツの中で一番ボロいのを身に着けて面接室に入った私を迎えたのが、膝のところが裂けたレザーパンツと爪先の革が破れてスティールキャップの見えているエンジニアブーツ姿のIさんであった。Iさんは私と同じく肩に乗るくらいの長髪で脂っぽそうな髭までたくわえていた。
Iさんと私は1時間ほどブーツやロックミュージックや煙草の話をして盛り上がり、労働条件や業務内容については一言も交わさなかった。面接の最後にIさんは「あ、うち来る?」と言い、私は「やめときます」と答え、2人で笑いあって連絡先を交換して別れた。私が勝手に採用担当者に親近感を持ったからといって仕事が続くとは限らない。
Iさんとはそれ以来会っていないがたまにショートメッセージで音楽や映画等様々の話をする。最近ではブーツメーカーの買収と統合を2人で嘆いた。私が何かを嘆きながら笑えるのはIさんと一緒の時だけかもしれない。Iさんと私がとても親しいかというとそうでもないと思うものの、汚くて評判の悪い格好をしている人間が自分だけでないと思うと孤独は少し和らぐ。
私は親しい人と同じく親しくない人にも救われ支えられている。そして見知らぬ人にも。そういうことを思うと私もやはり少しは頑張って働いて、税金や年金や健康保険料を納付して誰かを支えようかという気にもなってくるのである。
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