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私の職場の先輩はたまに「私はB型なので」と言う。何のことかと思っていたのだが最近になって血液型のことを言っているのだと判明した。この先輩は過去に整体の仕事をしていた時に客の腰を誤って圧迫してぎっくり腰を誘発した話やデイサービスの仕事に就いていた時に入浴介助に失敗して利用者をのぼせさせた話をする際にも「私はB型なので」と血液型がそれらの事象の原因であるかのように述べていたので、そのうち物体の運動や数の性質も血液型で説明しようとし始めるのではないかと思って私は勝手に不安を覚えている。

先輩の血液型がB型だから何なのかは私には分からない。私は血液型による性格診断について知らない。よく話題に上ることなのに全然理解できないので聞いたそばから忘れているのだと思う。例えば私の血液型はAB型で、そのことで何度も「そうは見えない」とか「見るからにそんな感じ」等の評を受けることもあるのだが、何が意外で何がそんな感じなのか言われたことを一つも憶えていない。聞く度に新鮮な感じがしてそれはそれで良いかもしれない。勿論単に理解力や記憶力に乏しいだけと云うこともできる。

現実との整合性や私の理解の度合いはともかく、占いの類の話を聞いていると楽しい時がある。人間が雷鳴を神の怒りであると捉えていた時代のことを読むように、現在広く理解されている世界観とは異なる方法で事物を構築しようとする試みは美しく刺激的な姿を描くことがあるものだ。私もタロットカードのセットを持っている。占うことはできないがものの本と引き合わせてある構成の中のある位置に来たカードが何を意味するかなどと探るのは面白い。最近あった出来事に神秘的な解釈を与えてみたり、思案している事項についてカードの意味を加えて検討してみたり、遊ぼうと思えばいつまでも遊んでいられそうな気がする。

私に分からないことは多く職場の先輩とは話が噛み合わないことが多々ある。しかし分からないことは面白いし先輩は尊敬に価する方である。いろいろな話を聞いていられる時には聞いていよう。遊んでいられる時には遊んでいよう。忙しくしているばかりだとつまらないし、私が忙しくするのはその後で楽しいことをするためだったはずである。