40代・50代・60代・70代の友達作り・趣味探し・交流サイト

文字の大きさを変える
投稿者
tinc さんの日記
アクセス数: 249160 



カテゴリー
月表示
交流しよう
PR2
TOP  >  ハピブロ(日記・blog)  >  tinc  >  未分類  >  噂の美男

tinc さんの日記

カテゴリー [未分類] 
 
2021
7月 23
(金)
21:47
噂の美男
本文
私のかつてのパート先の飲食店にはカラオケの設備が設置されていた。現場従業員は一時期には女性のみで構成されていたが私の採用以後は男性が増え、年齢も経歴も様々なパート仲間の間では個人的な交流が生じ、閉店後にみんなで店のカラオケで遊ぶということも行われるようになった。私も歌うことがあったが、私は歌うと正しく音程を取れる箇所のほうが少ないくらいのひどい音痴であり、笑ってもらえればまだ良いほう、人によっては私の歌を聞くと顔が歪むくらい不快になるということもあるほどであったので、閉店後にはなるべく早く退店するようにしていた。

ある日私は一人のパート仲間から「Nさん(私)は最近カラオケやらないんですか?」と声を掛けられた。
「下手なので」と私が答えると彼は目をぱちくりさせ、「Nさんが歌ってるところ格好いいですよ。また歌ってほしいです」と言った。私は面食らいながらも、「わざわざすみません。またそのうちに」と答えた。

この彼を仮にKさんと呼ぶ。
Kさんは有名な私立大学に通う若い男性であった。眉目秀麗であることと接遇が丁寧であることから常連客の間でもてはやされていたようで、当時パートリーダーという立場であった私は店のオーナーから「Kくんにはよくしてやって。辞められると困るから」と何度も言われていた。Kさんはそのような人気や雇い主からの重用にも甘えることなく、いつも手間のかかる雑用や暑さ寒さの最中の屋外の業務などを率先して黙々と行っていた。私には他のパート仲間とのシフトも楽しかったが、Kさんと一緒の時は連絡の齟齬が殆ど無く業務の進捗も分かりやすかったので彼にはとても感謝していた。

Kさんはある時私へ「Nさんは死にたいと思ったことがありますか。死について何か考えることがありますか」と尋ねた。
私は「ありますね」と答えた。
「死んだらどうなるんですかね」Kさんは言った。
「私には分かりません。死についてはいろいろなことが言われていますが、それでも分からないくらいだから分からないんでしょう」
「ぼく、死ぬほうが楽だと思うことがあるんですよ」
「ええ」
「でも自殺すると地獄に落ちるっていうことも聞いて、そうかもしれないと思うと怖くて」
「そうですか」
「Nさんはどう思いますか」
私は少し考え、死について自分の考えるところを述べた。死は重大なものであるということだけが知られていて、死に関する事実は殆ど知られていない。重大なことに関して事実が明らかでない場合、人の間には噂が立つ。死についてもおそらくそうで、死について知りたいが知り得ないので人は噂をするように死について何かの話を作るのであろう。人はいずれ死ぬという事実から、だから何をするのもむなしいという結論と、だから精一杯のことをするべきだという結論の両方が導かれる。死は検証の困難なものであり、検証の困難なものについて語ることはやはり困難である。概ねそのような内容であった。
「噂ですか」とKさんは言った。「噂だとすれば、あまり真に受けないほうがいいんですかね」
「噂を真に受けたがる人もいますが、私はやめたほうがいいと思いますね」
その後は黙々と二人で清掃作業を続けた。新規の来店は無いまま閉店時刻が来て、二人でカラオケをして遅くに帰った。

そのパート先を私が去って暫く経つ今も、Kさんはたまに私に連絡をくれる。
直近の連絡では大学を卒業した後就職するか大学院へ進学するかについて考えているということであった。私は例によって内容の無い相槌と、ご自身の判断を信用するのがよろしかろうという一般論の返答で済ませた。彼は「世間の評価も噂みたいなものかと思っています」と言い、私は「私もそう思います」と答えた。

壮年の人はよく若いやつが頑張っていることを喜ぶように思う。私にもそういう気持ちは無いわけではないものの、若い人には若い人なりの苦労もあり、しかもその苦労が社会の状況や構造に由来するものである場合その苦労は私のせいでもある。だからただ頑張れというのは好きでない。何かを言うほど立派にはなれなかった。せいぜい追及を受けた時につまらん言い訳をしないようにしておこうと思う。
閲覧(950)
カテゴリー
投稿者 スレッド
tinc
投稿日時: 2021/7/25 20:31  更新日時: 2021/7/25 20:31
プラチナ
登録日: 2019/8/24
居住地: 東京都
: 男性
投稿数: 1735
 RE: 噂の美男
わだちさま

こんばんは。返信が遅くなりました。
人生いろいろですね。塞翁が馬です。何が幸いし何が不幸に繋がるか、何を以て幸不幸と見なすか、なかなか難しいものです。

私もひとの幸も不幸も嫌というほど見てきました。
私のブログからして論でないので論点は最初からありません。お気になさらないでください。
わだち
投稿日時: 2021/7/24 17:14  更新日時: 2021/7/24 17:14
プラチナ
登録日: 2020/12/7
居住地: 京都府
: 男性
投稿数: 1045
 RE: 噂の美男
tinc さん、良い御仲間が居て羨ましいですね。でもあながち喜べないかも。
外見だけでは人は判らないものだと思います。良い学校を出て、一流企業に就職して、将来有望と思われた人が、意外とそうで無かったのを見て居ます。私の様に、学生時代から期待されなかったので気楽です。

 長い人生には、波有り、谷有り、成績の良かった友達の、早死に、原因不明の逝去の表示、遺産相続で、嫁ぎ先をほおり出された、子持ちの寡婦、嫌と言う程見て来ました。論点がズレましたっけ?済みません。
tinc
投稿日時: 2021/7/23 22:24  更新日時: 2021/7/23 22:24
プラチナ
登録日: 2019/8/24
居住地: 東京都
: 男性
投稿数: 1735
 RE: 噂の美男
さくら日さま

こんばんは。
Kさんについて書くのは初めてだと記憶しています。私は若い人にもてるというよりも大人の中の落ちこぼれみたいな人間なので若い人が近づきやすいのではないでしょうか。

私は多くの人からの多くの話にただの相槌で対応してしまっており、あまり良くないと思っています。自分に何ができるかということは難しい問題です。自分のしてあげたいことと相手のしてほしいことは常にどこか異なるものだと思います。
Kさんと私との遣り取りはたまたま噛み合ったのかもしれません。思慮があったのならKさんのほうにあったのではないかという気がします。

まことに立派でなかったとしても自身の考えを持って物事に臨みたいものです。私も対応力に自信の欠片も持ち合わせませんが、自信が無いなりにでも何かの形を成したいと考えています。
さくら日
投稿日時: 2021/7/23 22:10  更新日時: 2021/7/23 22:10
プラチナ
登録日: 2020/12/11
居住地:
: 女性
投稿数: 3035
 RE: 噂の美男
tincさん、こんばんは。

若い男性にもおもてになるんですね。
前にも登場した方とは違いますね?たぶん。

死にたいということを相談できる相手は特別な人だと思います。信用できない人間には絶対にしませんから。
そんな相談ができるtincさんは彼にとって特別なのでしょう。こういった質問には、相手が期待するのは答えではなく、まさしく相槌のようなもの、だけれど真剣なものだと思います。

私はこういった相談を受けるとつい、余計なことをたくさん言ってしまっていることに改めて思いあたります。
相手が求めているものをうまく与える応対ができるかどうか、それはとても難しい。

色々な方とtincさんの応対から学ぶことは多いです。理屈ではなく思慮を伴ってのそれらは、私にはないものだからです。

と言っても真似はできません。自分の対応力の無さに絶望しつつも、私も若い方々に言い訳をせずに済むよう立派ではなくてもなんらかの形を作るよう心がけたいと思います。

コメントを書く
コメントを書くにはログインが必要です。
おすすめ情報
あなたのページへログイン
ユーザー名:

パスワード:
SSL  | パスワード紛失  | 新規登録
新規登録メンバー
綾乃 女性 埼玉県
遥斗 長野県

garden
女性 神奈川県
アイン 男性 東京都
高宮ゆい woman Tokyo
VIC 男性 東京都
ルナp 横浜
愛子 女性 东京都足立区
MKO 女性 東京
KWM 女性 東京


PRコーナー
ハピスロ世代について このサイトの使い方 | メンバー登録 | 困ったときは | 事務局からのお知らせ | ご利用規約 | プライバシーポリシー | 会社概要 | 広告掲載に関して | お問い合わせ | リンク集
メンバーコンテンツ メンバー検索 | なかよし広場(コミュニティ) | ハピスロ日記(ブログ)写真投稿コーナー出会いの広場交流掲示板異世代交流サロン体のお悩み掲示板
お楽しみ情報 イベントカレンダーあれこれ気になる調査隊オススメ穴場スポット素敵にアンチエイジング歌声フォークソング懐かしの歌声ホール
趣味の情報 街歩き | 山歩き | ウォーキング・ジョギング | レシピ | グルメスポット | DIY/日曜大工 | 手芸 | 陶芸 | ダンス | 歌・カラオケ | 楽器
運営: アトムブラザーズ音楽出版株式会社 © 2012