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湘南のカモメ さんの日記
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湘南のカモメ さんの日記

 
2021
1月 30
(土)
11:14
コーヒーカップ
本文
近くまで行くと、たまに寄る<喫茶店>があります。
昭和の純喫茶風のしつらえで、決して今風の<カフェ>とは呼べないお店です。
ドアを開けて入るとすぐのカウンター席にはいつも常連たちがたむろしていて入ってくるお客に一斉に顔を向けます。
「知り合いかな?」と思ってのことかもしれませんが、初めて入るお客さんには無言のプレッシャーを与える気がして、このお店の造りに関してはマスターにそれとなく言ったことがあります。

昨日もそうでした。
しかし、入ってきたのが私だと判ると、常連さんたちは破顔一笑
「久しぶり~?」とか「元気でした?」と声をかけてくれました。

この喫茶店、常連さんにはそれぞれ「その人専用」のコーヒーカップがあって、滅多に行かない私専用のカップも用意してくれています。

話したことはないのですが、時々顔を合わせると会釈程度の挨拶をする40代後半?と思しき女性も出入り口に近いカウンター席に座っていました。
ふと見ると、私のカップによく似たカップでコーヒーを飲んでいました。

最近のカフェは良くて紙ドリップですが、この喫茶店は昔どおりのネルドリップで、
ドロッとした濃いコーヒーを淹れてくれます。
いつものように「ブラックで!」

その時でしたマスターが「今日からカモメさんのカップを変えたから!」

このお店だけのサービスですし、他の喫茶店に行けばそのお店のカップで飲むのですから
そんな小さなことには一々気にしません。
「あ、そうなの?」と新しく買って用意してくれていたカップに口をつけました。

やがてその女性が席を立って帰って行くと、マスターは「どうも済みません」
そこで「なんで?別に構わないよ!」
隣にいた常連さんが「よっ!色男!いいよなぁ!モテル男は!」というではありませんか?
「なんのこっちゃ?」と怪訝な顔をすると、他の常連さんが「今出て行った女がさぁ、あんたのカップで淹れてくれって言ってマスターも困ってたんだよ」

聞いてみると、この喫茶店近くに住んでいる人妻だということでした。

私は頻繁にお客さまに会う仕事です。
常に身奇麗にして、着るものもそこそこ考えて着ていますし、古くても靴は常に磨いてありますが決して<いい男>でもありませんし、<モテる>訳でもなければ<色男>でもありません。

「薔薇の花が好きなんじゃないの?」と常連さんの言うことは無視しましたが、そう言われてみると、私を見る目が粘っこく嫌に絡まりつくなぁ!といつも思っていました。

そんな目をする女性はこの人だけではありませんので、気にもしていませんでした。

カップの内側にまで薔薇の花が咲いているカップでしたが、これからは男らしいコーヒー色のカップに変わりました。
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