tinc さんの日記
2021
1月
26
(火)
05:21
本文
私の愛読書に夏目漱石の『硝子戸の中(がらすどのうち)』がある。およそ2か月前、今の職場に入って間もなくの頃に私に読書の習慣があるという話をしたところ、ある先輩から「おすすめの一冊ってある?」と尋ねられて答えたのが同書であった。
昨日その先輩から「読んだよ、夏目漱石」という連絡があった。先輩曰く非常に良かった、漱石のところへ苦しい身の上話をしに来たある人が帰宅する際、その人が漱石に伴われて帰るのは勿体ない、光栄であるということを言ったことに対し、漱石が「そんなら死なずに生きていらっしゃい」と告げるところと、漱石と大塚楠緒子の交流の思い出から彼女の死の報せを受けたことを描く場面との2つが特に良かったとのことであった。
「どう良いと思いましたか」と私が尋ねると、先輩は「すごい優しいよね、夏目漱石」と答えた。
私は漱石がきわめて倫理的であるとは思っていたものの、「優しい」という言葉に思い至ったことが無かったのでその感想を斬新に感じた。言われてみれば倫理的であるということを感性の面に重心を置いて見れば優しいという表現にもなろうかと思う。
先輩の話はその以降は漱石と大塚楠緒子の間の恋情に関して進展してゆき、「漱石のような男はもてる」という結論に至ったようであった。私はつまらぬ相槌を打ちながらその話を聞いているのみであったが、内心では先輩が『硝子戸の中』を読みそれを楽しんだ様子であるということに喜んでいた。そして私が今まで持つことのなかった、漱石が優しいという見方を与えられたことに対する先輩への感謝もあった。
先輩としては社交の一環として薦められたものは一度は試みておくという意思であるとしても、その場合はその社交への律儀さが私には無いものであるので有り難く感じられるところである。今私には誰かから勧めを受けて取り寄せておきながら読んでいない本が数冊ある。習慣的に読書をする人間はだらだらと気の向くまま読むことから脱さずにいることが多く、私はその典型的な一例である。今回の先輩に倣い、少し整理をして意識的に読むことをしてみようかと思う。
昨日その先輩から「読んだよ、夏目漱石」という連絡があった。先輩曰く非常に良かった、漱石のところへ苦しい身の上話をしに来たある人が帰宅する際、その人が漱石に伴われて帰るのは勿体ない、光栄であるということを言ったことに対し、漱石が「そんなら死なずに生きていらっしゃい」と告げるところと、漱石と大塚楠緒子の交流の思い出から彼女の死の報せを受けたことを描く場面との2つが特に良かったとのことであった。
「どう良いと思いましたか」と私が尋ねると、先輩は「すごい優しいよね、夏目漱石」と答えた。
私は漱石がきわめて倫理的であるとは思っていたものの、「優しい」という言葉に思い至ったことが無かったのでその感想を斬新に感じた。言われてみれば倫理的であるということを感性の面に重心を置いて見れば優しいという表現にもなろうかと思う。
先輩の話はその以降は漱石と大塚楠緒子の間の恋情に関して進展してゆき、「漱石のような男はもてる」という結論に至ったようであった。私はつまらぬ相槌を打ちながらその話を聞いているのみであったが、内心では先輩が『硝子戸の中』を読みそれを楽しんだ様子であるということに喜んでいた。そして私が今まで持つことのなかった、漱石が優しいという見方を与えられたことに対する先輩への感謝もあった。
先輩としては社交の一環として薦められたものは一度は試みておくという意思であるとしても、その場合はその社交への律儀さが私には無いものであるので有り難く感じられるところである。今私には誰かから勧めを受けて取り寄せておきながら読んでいない本が数冊ある。習慣的に読書をする人間はだらだらと気の向くまま読むことから脱さずにいることが多く、私はその典型的な一例である。今回の先輩に倣い、少し整理をして意識的に読むことをしてみようかと思う。
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