tinc さんの日記
2020
11月
8
(日)
22:15
本文
以前このブログに何度か書かせて頂いた、私がある飲食店でパートをしていた頃の先輩と今日の日中に待ち合わせた。先輩は暫く前に身体障害者手帳を取得し障害年金の受給も開始したという。わざわざ私の最寄り駅まで来て改札を出たところで待っていて下さった。
「本当はすぐお礼を言おうと思ったんだけどね、何を言っても嘘みたいに思えてね」と先輩は会うなりそう言い、泣き出した。そして私の胸に顔を埋めて嗚咽した。
私は黙っていた。数分の後に先輩は顔を上げ、「だからただ会いに来たよ」と言った。
私は先輩の福祉受給の手続きに立ち会っただけであり、私の介入で障害者手帳や年金が支給されるようになったわけではないので礼を言われる立場に無い。ただ会いに来た、と言われたことは私には思いがけないことで、有り難くもあり不思議でもあった。
先輩の先天性の持病の病巣は心臓であるそうだ。そのことで長時間の外出は困難であり、カフェスタッフという動き回る仕事をよくやっていたと思う。本当はそれをよくやっていたと云ってはならず、私は先輩がひとまず無理に働かず実家でなら過ごせるくらいの少額の年金の支給を受ける気になったことに安堵を覚えた。
改札前に突っ立っているのも何だからということで近くの喫茶店へ移動した後は、先輩は以前の快活な様子に戻り、近頃の生活の様子や趣味活動のこと等を明るく笑いながら話してくれた。あっという間に2時間が過ぎ先輩は帰りの電車に乗らなければならなくなった。
再び改札前に並んで立った時、先輩は「やっぱり何かお礼がしたいな」と言った。
「前にも言いましたが」私は答えた。「死なないで下さい。それしかありません」
先輩は腕を組んで首を傾げていたが、「よし、わかった。死なない」と神妙そうに言って、手を振って帰っていった。
帰り道に私は自分が人と会う際には基本的に用件があるはずであると考えていることを自覚した。しかし先輩の「ただ会いに来た」という言葉を受けて、別に用件が無くても人と会ってよいのだ、という思いが自分の心中に生まれていることも自覚した。これは私が尊ぶところの自由というものの一つの形であるように思われるので、このことを先輩からの学びとしてよく考えるようにしようと思う。
「本当はすぐお礼を言おうと思ったんだけどね、何を言っても嘘みたいに思えてね」と先輩は会うなりそう言い、泣き出した。そして私の胸に顔を埋めて嗚咽した。
私は黙っていた。数分の後に先輩は顔を上げ、「だからただ会いに来たよ」と言った。
私は先輩の福祉受給の手続きに立ち会っただけであり、私の介入で障害者手帳や年金が支給されるようになったわけではないので礼を言われる立場に無い。ただ会いに来た、と言われたことは私には思いがけないことで、有り難くもあり不思議でもあった。
先輩の先天性の持病の病巣は心臓であるそうだ。そのことで長時間の外出は困難であり、カフェスタッフという動き回る仕事をよくやっていたと思う。本当はそれをよくやっていたと云ってはならず、私は先輩がひとまず無理に働かず実家でなら過ごせるくらいの少額の年金の支給を受ける気になったことに安堵を覚えた。
改札前に突っ立っているのも何だからということで近くの喫茶店へ移動した後は、先輩は以前の快活な様子に戻り、近頃の生活の様子や趣味活動のこと等を明るく笑いながら話してくれた。あっという間に2時間が過ぎ先輩は帰りの電車に乗らなければならなくなった。
再び改札前に並んで立った時、先輩は「やっぱり何かお礼がしたいな」と言った。
「前にも言いましたが」私は答えた。「死なないで下さい。それしかありません」
先輩は腕を組んで首を傾げていたが、「よし、わかった。死なない」と神妙そうに言って、手を振って帰っていった。
帰り道に私は自分が人と会う際には基本的に用件があるはずであると考えていることを自覚した。しかし先輩の「ただ会いに来た」という言葉を受けて、別に用件が無くても人と会ってよいのだ、という思いが自分の心中に生まれていることも自覚した。これは私が尊ぶところの自由というものの一つの形であるように思われるので、このことを先輩からの学びとしてよく考えるようにしようと思う。
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