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昨日、総合病院の耳鼻科へ行った。

「味覚、嗅覚がない症状には対応していません」の貼り紙。
コロナで「そんな気がする」と駆け込んでくる方が増えたそうだ。

味覚と嗅覚がなかったら人生、どんなに味気ないだろう

たくさんの旅の思い出がそれらなしでは語れない。

西オーストラリアで雨の日の時間つぶしに立ち寄った広い本屋の蜜蠟の匂い。
地元の方の手作り蜜蠟キャンドルを置いていた。
幼かった娘が「幼稚園と同じ匂いがする」と言った。

クライストチャーチの巨大スーパーのフルーツ売り場のさまざまなフルーツの入り交ざった匂いと、その晩の満月を見上げた時に一瞬感じた何かを燻すおいしそうな匂い。

アメリカではどこへ行ってもすれ違う人の持つコーヒーの湯気の匂い。たまらなくなってスタバへ飛び込んだ。

南国のスコールの後の青臭い樹木と濃厚な花の入り混じった匂い。そんなときの搾りたてのスイカのジュース。

冬のパリの街で匂いに誘われて指先を火傷しながら食べた焼き栗。

音や画像、映像は残せても匂いを残せないのは残念だ。
世界からいろんな匂いを小瓶に詰めて持ち帰りたかった。

ときどきとてもリアルに思い出すのが
長年連れ添った文鳥たちの匂い。

二羽とも水浴びのあとで飛んできて私の肩で羽繕いをして満ち足りて大福のようにつぶれて眠る。
柔らかな背中に鼻を押し当て、においを堪能した。
一羽はインドカレーそのもののスパイシーな匂い。もう一羽は甘いメープルシロップの匂いがした。
（文鳥の個性的な体臭は文鳥飼いの間では有名な話です）

あの子たちとは次の世でもきっと会いたいと思う。