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私は死を恐れている。死に関して具体的に何が恐ろしいのか知らないができれば死にたくないと思いつつ生活をしている。
しかしいつかは死ぬことが確定しているしいつ死ぬかもそうそう選べないし、おそらく生きていれば死ぬべき価値のある時も来るのだから、せいぜいいつ死んでもよいように準備をして楽しく過ごすことにしている。私の場合は死んだところで他人への影響は殆ど無いものの（死に方にもよる）、死に関してでなくても恐怖が心の広い部分を占めると苦しくて楽しくないので自分のためになるべく望ましい状態に近づけておきたいところである。

日々楽しいことを追求していて感じるのは、楽しいことはそれを失うことを恐れた時から楽しくなくなるということである。
また時に人と会って話をしている際にも、その人の心中に私への悪感情や低い評価があるのではないかと想像して恐ろしくなることがある。しかし本質的にその人の心中はその人のものであり、悪感情や低評価は多寡はあれど存在するのが通常である。それをその人へ任せられないというのは尊重の放棄であり、楽しみを失うのと同時に非倫理的態度を取ることにもなっている。
してみると少なくとも私の狭小な日常の範囲において恐怖は有用性が低く害の側面が目立つ。私を事故や犯罪から遠ざけ生存させているのは恐怖である一方、生存のみで飽き足らず人間的生活を希求する私をそこから遠ざけているのも恐怖である。

昨今世界中を震撼させ続ける新型ウイルス感染症の流行に際し、同感染症を「正しく恐れる」ことを訴える声明を目にした記憶がある。詳細を記憶していないながら、偏見を捨て風説を排し、事実に基いて対処を行うことを求めるという大筋であったように憶えている。これには全く同感であり、多くの事物に対し敷衍できる姿勢であると思う。
私は恐怖に躍らされることを止め、それを適切に運用することをもっと学びたい。