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今朝早くにある知人から別の知人の不倫に関する新情報が入った。情報の内容はもう覚えていない。興奮あらわな彼の声の途切れるのを待たずに私は通話を切って、ベランダに出て煙草を吸った。一羽の烏と目が合って、笑いかける私の顔はたぶん歪だったと思う。

醜聞に際しては急拵えの劇場が開かれる。罵倒したり断罪したり応援したり詮索したり見てみぬふりをしたり、それぞれの役割があってその通りに行動することが求められる。その中で自身の影響力の拡大を志向する者、混乱を引き起こしてより多くの耳目を集めようとする者、時には実利を得る者がいて、劇場は市場化してわれわれは商品になって消費される。立ち居振る舞いに気をつけたまえ。
一連のスキャンダルコードを私は遵守したことがないから、ずいぶん前から誰も私へ劇場への招待状を送ってくれなくなっている。ミス1だ、I君。劇場の側を通りがかった不審者を使いぱしりにしようと君は声をかけたが、そいつはずっと前にみんなから叩き出されたのだ。みんなでいじめて楽しもうというのは分からないではないけれど、本当にみんなもうそんなに退屈している頃かな。タイミングを間違えると今度は君が爪弾きだぞ。

私は部屋に戻ってコーヒーを淹れて、熱いまま一杯飲み干した。昨日スーパーで買った安い柏餅を食べて、この駄菓子のほうが醜聞より余程価値があると思った。

世間に私の居場所は少ない。醜く気の弱いろくでなしに構う奴は限られている。しかし珍しく差し伸べられた手が悪意に汚れていたとしたら、その手を取ることは見送ったほうがやはり良い。いつ死ぬか分からないのに、なりたくもない自分の役なんかやっていられない。いくら暇でも。