しき さんの日記
2020
4月
16
(木)
11:47
本文
気まぐれに朝の散歩に出ている。
自宅を出てから帰るまで、約1時間の、散歩と言うには速すぎる歩み。
お隣の小さな一部落まで足を延ばせば、そこには田んぼと小川と丘の、長閑な風景が広がる。
時折、抜け道として通る出勤の車以外には、ほとんど人と会う事はない。
今朝は風が強かった。
いつもの散歩道は途中、長い長い一本道で、左右が田んぼなので、風は遮られない。
折り返しからは向かい風になるなあ…と、丘にあるゴルフ場の脇を回り込んで帰る道を選んだ。
風に帽子を飛ばされないようにしながら歩いていると、私の前を小鳥が、足に何かを掴んで飛んで行った。
が、直ぐにアスファルトの道の上に、掴んでいた何かを落とした。
私の進行方向だったので、小鳥は拾う為に戻る様子も無く、ただ頭上で鳴き声が聞こえるばかり。
近寄ってみると、それは瀕死の小鳥だった。
手袋をした手で拾い上げると、小鳥はまだ生きていて、温かい。
細いクチバシには赤い血。
首はクタクタで、もう生きられない事は明白だった。
掌の中で、小鳥はクチバシをカタカタ震わせた。
私は「痛い?痛いの?ヨシヨシ、よしよし」などと、鳥には分からない言葉で話しかけた。
仲間から見えるように、小鳥を掌で包み込み、温める。
それよりももっと温かい小鳥の体温。
私の掌の中で、小鳥はクチバシを震わせ、やがてそれも止まりそっと眼を閉じた。
どうして同じ種類の小鳥を脚で掴んでいたか、喧嘩だったのか、連れて帰りたかったのか。
私は命の消えた小鳥を、車に轢かれない、カラスに突かれない陰に置き、近くにいるだろう小鳥たちの声に向かって言った。
「ここに、居るからね」
私は割りとドライな人間(人はそう見てる)なので、帰り道では小鳥の事は忘れようと努めた。
けれど、掌の中で絶命した小鳥を、連れて帰って埋めてあげた方が良かっただろうか?
とか
本当に絶命してから、手から下ろしたんだろうか、まだ生きていたかもしれない、とか
ずっと考え続けていた。
しばらく歩くと、向かい側から小さな女の子を三輪車に乗せて散歩している、若い今風のお父さんがやって来た。
お母さんの朝ごはんの支度に、邪魔にならないように連れ出したのだろうか?
3歳くらいの子どもの散歩には早すぎる時間だ。
すれ違う時、挨拶をしても良いものかと、迷っていた私に
「おはようございます」とそのお父さんが言い、女の子もおはようこざいます。
と、笑顔で言った。
私もニコっと笑って
「おはようございます」と女の子とお父さんに挨拶をした。
お父さんと女の子の笑い顔と挨拶に、小鳥の最期の温もりは
掌から消えて行った。
自宅を出てから帰るまで、約1時間の、散歩と言うには速すぎる歩み。
お隣の小さな一部落まで足を延ばせば、そこには田んぼと小川と丘の、長閑な風景が広がる。
時折、抜け道として通る出勤の車以外には、ほとんど人と会う事はない。
今朝は風が強かった。
いつもの散歩道は途中、長い長い一本道で、左右が田んぼなので、風は遮られない。
折り返しからは向かい風になるなあ…と、丘にあるゴルフ場の脇を回り込んで帰る道を選んだ。
風に帽子を飛ばされないようにしながら歩いていると、私の前を小鳥が、足に何かを掴んで飛んで行った。
が、直ぐにアスファルトの道の上に、掴んでいた何かを落とした。
私の進行方向だったので、小鳥は拾う為に戻る様子も無く、ただ頭上で鳴き声が聞こえるばかり。
近寄ってみると、それは瀕死の小鳥だった。
手袋をした手で拾い上げると、小鳥はまだ生きていて、温かい。
細いクチバシには赤い血。
首はクタクタで、もう生きられない事は明白だった。
掌の中で、小鳥はクチバシをカタカタ震わせた。
私は「痛い?痛いの?ヨシヨシ、よしよし」などと、鳥には分からない言葉で話しかけた。
仲間から見えるように、小鳥を掌で包み込み、温める。
それよりももっと温かい小鳥の体温。
私の掌の中で、小鳥はクチバシを震わせ、やがてそれも止まりそっと眼を閉じた。
どうして同じ種類の小鳥を脚で掴んでいたか、喧嘩だったのか、連れて帰りたかったのか。
私は命の消えた小鳥を、車に轢かれない、カラスに突かれない陰に置き、近くにいるだろう小鳥たちの声に向かって言った。
「ここに、居るからね」
私は割りとドライな人間(人はそう見てる)なので、帰り道では小鳥の事は忘れようと努めた。
けれど、掌の中で絶命した小鳥を、連れて帰って埋めてあげた方が良かっただろうか?
とか
本当に絶命してから、手から下ろしたんだろうか、まだ生きていたかもしれない、とか
ずっと考え続けていた。
しばらく歩くと、向かい側から小さな女の子を三輪車に乗せて散歩している、若い今風のお父さんがやって来た。
お母さんの朝ごはんの支度に、邪魔にならないように連れ出したのだろうか?
3歳くらいの子どもの散歩には早すぎる時間だ。
すれ違う時、挨拶をしても良いものかと、迷っていた私に
「おはようございます」とそのお父さんが言い、女の子もおはようこざいます。
と、笑顔で言った。
私もニコっと笑って
「おはようございます」と女の子とお父さんに挨拶をした。
お父さんと女の子の笑い顔と挨拶に、小鳥の最期の温もりは
掌から消えて行った。
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