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髪の毛を切りました。

このお休み中に「つんどく」してある本を読み終えてしまいたいと思ってかばんに何冊か忍ばせています。それで美容院でも読みたかったのですが、何回か行ったことのあるところで、あれはどういうんでしょうか、なんか話をしなきゃいけない！という風に接客指導を受けるんでしょうか、やたら話しかけてくれるのはありがたいのですが、こちらも話題を提供しなければいけないような気がして、ワイドショーで見尽くした、語られ尽したコロナの話題（ちょっと辟易しているのですよ。ごめんなさいね）を振ってみたりなんかして。

中学生のころ、近所のスーパーの中にあるおしゃれでもなんでもないフツーの美容院に通っていました。もう一つ手前の我が家に極近の美容院は、頭にカーラーを巻いたおばちゃんがおかまの中に入っているような、近所のおなじみさんばかり集まるようなところで、おばちゃんに「どこんちの子～？」なんて声をかけられたりするのがいやだった、年頃でしたから。

そのなんということのない美容院にはオーナーだと思われる人と、雇われている若い美容師さんがいて、私の担当はいつもその若いお姉さんだった。女優の小野みゆきにそっくりな本当に美しい人。この人がとても寡黙で、とはいえ髪を切るんだから、どんな風が良いとか揃えるのか短くするのか程度の話はあっただろうに、カットしているあいだ一言も話をしなかったことした覚えていない。
寡黙な美しいお姉さんは人見知りなのか、職人だからなのかは知らないけれど、私にとっては話をしないことが実は心地よかった。ああ、この人は私と同じ空気をまとっている、と思った。そして自分の髪を切ることを他人にまかせるという思春期の少しだけ恥ずかしいようなものが混じっていて、月に一度のピリッと緊張するひとときだったのでした。

そんなことを思い出したのは、あたたかい暖炉のまえで火を見つめながら、誰かと「無言のおしゃべり」をしたくなったせいでしょうか。