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焦らなくても良いのにねえ。

彼は高校一年で出会って、
それからずっと不思議な付き合いでした。
彼は私と同じ誕生日。
これも付き合いが続いた理由なのでしょうね。

彼は背も高くて顔立ちも良くて、
もてはりました。
実家も裕福で、でも気取りなんかないんです。

私はバイクも乗らないし、
タバコを吸う事もないし、
共通の友人が居ても高校ではそんなに付き合いも無く本格的に繋がりが出来たのは大学時代ですね。

彼はバンドを組んでいてボーカル担当でした。

私は高校で放送部に居たこともあって、
音響を手伝って欲しいと言われて、
彼のバンドのライブはほとんど私が音響をしてました。

彼はプロのイベンターとの繋がりがあって、
そんな世界も思い描いてたのかなあ。
勿論バンドで食べて行くなんて話ではなくて、
イベンターとしてですよ。
私は音響の勉強のためにプロの世界を紹介して貰ってバイトとして３年くらい居ましたね。
この時の音楽との繋がりが今も私に素晴らしい時間をくれています。
二人共そのままプロの世界へ行く道もあったはずだけど、
結局お互いにそうはならなくて、
最後までアマチュアのままでした。

誕生日が同じなので毎年電話をくれたりこちらから電話をしたり、
一緒に誕生日をお祝いしたり、
家に泊まりに行ったりもしてたなあ。

学生時代は車に機材を積んで夏の海岸で演奏したり、
冬の赤倉でスキー客向けに演奏したり、
宗教の集まり、クリスマスのパーティー、
祭りの余興もあったなあ。
あっちこっち行きましたわ。

そんな彼もお酒で身体を壊してからは中々会えなくなって元気にしてるかなと気には掛けていました。

それがこの台風の中、
本当は私はF1観戦で家にいない筈だったのに、
足止めを食った土曜日の昼ごろ、
共通の友人から電話を貰って『もしかしたら危ないかも』と言うので病院へ駆けつけて、病室で手を握って『分かるか？』って聞いたら『分かるよ』って微かに微笑んでくれました。
ほんの短い時間だったけど、大切な時間を持てました。
翌日の日曜日、私は予定通り鈴鹿へ出掛けて、
観戦が終わってから携帯を見たら、
前日に連絡をくれた友人からで『彼は今朝旅立った』とのメッセージを見つけました。
私は月曜まで鈴鹿に居て、
火曜に行われた彼の告別式にはちゃんと参列出来ました。

F1と台風の間に上手いことスッポリ治まる形で、
最後に会って話も出来たし、旅立った後もしっかり見送れました。

このタイミングってなんなのでしょうね。
それは同じ日に生を受けた瞬間に既に決まって居たタイミングなのかも知れません。

向こうへ行ってもいつかまた追いかけますよ。
それまでは、もう少し先に旅立った友達とゆっくり話しでもしといてくれ。