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軽口を叩いたり、軽い下ネタを振ってくる、ジム仲間の爺ちゃんがしんみりと「命日なんだ。15年になる」

奥様を亡くされたことは知っていたが、詳しくは知らなかった。
「クモ膜下出血で眠ってるうちに。おやすみ、って寝るまではなんともなかったんだよ」

なんとまあ…まだ60歳だったそうだ。

それからの15年間、彼は2度の癌と2度の脳梗塞、そのたびに蘇り毎日ジムでできる範囲のことをやっている。
家にいると滅入るし、1日でもリハビリ代わりの運動をしないとてきめんに麻痺がひどくなるそうだ。

「自粛なんかしてるとかえって命取りになるし、もう好きなように生きるよ」

「それにしても俺がこんなに病魔と戦ってきたのにあいつはずるい!1日も寝込まずに突然逝っちまって」

そうねえ。
60歳という側面だけを見るとまだこれからなのに…と思うけど、早過ぎるピンピンころりと思えば、心から私もそうありたい。
私自身の生への未練は死ねば当然無くなるし。

娘は悲しむだろうけど「親はいずれ逝くもの」とすぐに割り切れそうだ。

爺ちゃんも5年くらい前までは私を口説いてきたり
ガールフレンドを公然と募集したりしていた。
まだまだ男だぞ、が口癖だった。

しかし後期高齢者となり、すっかり落ち着いたようで
「あの世であいつに会っても胸を張れる」と言っている。

はいはい、あのとき、しつこく誘ってきたことは
あの世で奥様に会っても言わないからね